ひとの世のあやまちはひととひととをつなぐ霧の中のゴムボール投げのように

互いに煩悩を返礼する


愛が手段の性と愛が目的の性まちがえば理解しあえる

遺伝子のひとり芝居


魂の乗り物をみがけと誰に言われた現場を知らないシンカーのように うそつきは決して汚れない

ひとはひとの中にしか罪が見えない


座席のない乗り物をみがいているだから魂の在りかが見えない

乗り物は行き先も告げずに出発する憎しみも悲しみも置き去りにして



人と人とが殺し合うのは素敵だと

アドレナリンが、僕にメッセージを伝える遺伝子情報が沸騰している


四月の微風、五月の瘴気ネズミたちは知っている

気のせいか、確かに気のせいだ心は確かに受信している


裏切るのは命許せるのも命

くりかえしくりかえすのもやはり命


死神が教えてくれる愛もある

青い空に流れる白い雲、木の葉のみどり樹よ、幸福に耐える術を教えてくれ



あらしの夜には耐える木もこんな真っ昼間に倒れる

どこかでささえてくれる手を信じてみようとするからだ


伝えなければならない

これをあなたに伝えなければにくもこころも炎のなかに 巨きな炎には戻れない


リレーのバトンを手渡すように木々がひかりを引き継ぐように伝え了えたら倒れたっていい?


にぎりしめていたちいさなこぶしのなかににくの目には見えないてのひらの奥に

いまも託されているもののことを



仮の世に煩悩だけがしんじつ時計の針も

石庭の悟りも当てにならない


素足で歩くきみの回廊心も肉に変わるから

木の葉の揺らぎ、一千年の陽溜りこの祝福に耐えねばならぬ


風に乗って、川向こうから聞こえてくる子守歌には耳をふさげ

たとえつま先が水に濡れていても


波と波の結び目に紅い花びら

もう戦いの相手さえ思い出せないけれど心はやわらかいままにして

この世の祝福に耐えねばならぬ



重力は魂をつなぎとめる

だから地球上の生きものはみんな万物を落ちるに任せている


夏の満月の夜の寂しさは

この世に理由を持ってはいない通信がこんなとき

わずか頭にそそぐのだ


私たちが重力の檻を脱したら

どんなメッセージが伝えられるのかあの悩みこの苦しみ、みんな

種族の輪廻が決めたこと


町で一番高い朝の木が

最初の輝きに満たされるとき

私たちはもう回復期にあると思う



うすい桜いろした花びらの先端にやっと一滴が到達する

こう書いて雨がふりだすんなら海を燃やすのもわけないけど


火ということばで

燃えあがる目の奥にある森何回だって燃える脳髄の灰

けしてほんとうに死んでしまわない


見つめると穴があくというのはほんときみの視力がとてもいいなら

酸化していまこの紙は燃えている


みんなみんなにせものの火きみがいまマッチを擦って

火と書いたところを燃やしてください



バラ科の時刻、午前四時凍れ、凍れ、何もかも 涙の湖、暗喩の波紋

(哀しいことなぞ何もない)


怪我をしている林檎の夜明け枯れ葉がいっぱい泳いでる

(風邪をひいたら目をとじて うさぎの耳で保護されたい)


虚空に垂れる毛糸のマフラー真冬の包帯、記憶の傷の

(そのときぼくはいなかった)


北風ポタージュ、火の幼年忘れ果てたか、占いを

夢の修辞で焚きつけろ!



落下する青いりんごのスピードで季節のスプリングを圧縮する

花あかりなのだ。

ほんのすこしの呼吸停止


夏の想いは蒸発しやすい並木の道も閉じていく もううしろを見なきゃ

どこが前なのかわからない


つめたいパセリがパラパラ落ちるハムやチーズをはさんで食べて まぶたの隙間で焼けてます


そして季節は秋だった!

きみは鍵穴写真機のカメラマン耳の螺旋階段から身を投げる



ゆうぐれて空のまぶたを閉じるんは太陽が背を向け行ってしまうんは これからおこるよくないこと

見ないで済ますためなんか


夜に眠れるなんて不思議な ふくろうの星が涙をこぼしてこれから森で血が流される

けものが夜行性なのあたりまえ


目をつむったまま夜空は気づいている星がきらめくのでわかる

眠ったふりが優しさなのか


ゆうぐれの赤い睡眠薬にだまされまだ生きているうちに

すべては終わったんだとつぶやく



木漏れ陽、夜明けのインク壺からこぼれるまぶたの闇に、折りたたまれているみどり木漏れ陽、通りすぎる風の呪文

いっせいに薄目してみせる樹葉、星座をまねて


空、もう何も象徴するな

おまえにも意味があるなんて不潔だ

(けれど、呼びかける青いことばが

青空と生かす。老いさせる、一人のように)


今、若い窓だから よく軋む

開けばいつも小雨模様の陽のひかり桜は心臓を嚇かすものだ


怒りは未成熟な感情だ。

裏切り者、きみであり ぼくの心…

「しょせん芸術家にすぎない だが…」



りんごスープ

粉にしたチーズがふってくるうすぐらい湖

ときおりぺちゃんの魚がはねる


ここでは釣りは禁止です いっぱい笑って火をおこす骨くずのめだつお料理

(よく切れるナイフがいるな)


まわる惑星の振動で 夜も葉っぱが落下する

なんて奇妙ななぞなぞだ


あかるいあいだはボール投げみんな夜中に手をよく洗い きちんと疲れて眠る



なぞなぞはコーヒーに溶けきれないミルク模様が占えない

風が酔い寝覚めの水のつめたさに目は笑わない、想いは挫ける


サイホンも憎しみを発明するあかるい喫茶店を暮れさせるうすい揮発性を増してくる スプーンはまだ口をきかない


鍵は白く融けながら降ってくるどこまでも丘が見えないので 野原が錯乱する


なにが欲しかったんだろう 思い出せる夢はもう夢でなく

太陽は朝の電車のように眠たい



みどりの太陽錆びるころ

かたつむりのこども家出するいのちはとってもにがい薬だ

(甘いりんごもいりようさ)


夢を呼び返しちゃいけないつめたい青空で難破した

枯れ葉が螺旋階段を降りてくる

思い出に変わり果てた身で流れ着く


組み伏せられてもきみは視ていた

(それが嫌われた理由だったのに)なにを視つめていたんだろう


黄金仮面も銀の妖精も

魔法のとけたトランプカードが朝のテーブルに散らかっている



朝がきて目をさましてみて

いつも小さなものがなくなっていた窓には鍵がかかっていたから

きっと内部のものの犯行だ


真っ赤な目をしてがんばってみてもふいに火を吹く彗星みたい

消えたものはきっといらないものばかりもう願い事なんかするものか


ところであの頃のぼくは 波の音ばかりきこえてくる

古ぼけたラジオをいじってた


真夜中にあの海からきた なぜかなつかしい異国語の短波放送を聴いていた



ひまわりゼリーのくらい谷まにしろい蝸牛をとじこめた

闇のはじまる唇は

ゆうやけみたい焦げている


めに見えるものすさまじい はやく星空をオフにして! ことさらくらやみで捜してる夢の落としもの手さぐりする


星の火炎びんに点火してきみは過激に童話を読む

気がつくと指さきに火傷していた


「ほとけはつねにいませども」あけがたの海で溺れていたんだ花の香りだけ満ちてきた!



まひるのみるく皿からはずかしそう木はみどりの腕をひっぱる

指先で雪をとかせてる


あの海からいのちの熱量が渡る落下する羽と昇る夜の羽毛

速度のなかで落ち葉が呼ばれ 風のなかで枯れ枝は求めている


ゆうひに色をとられた鳥たち満ちる水辺をいっせいに

虹の滝壺へ飛びたった


寒い夜中の水道から

夢とわずかな水がしたたるいまふりかえらないことは鳥たちへの礼儀だ



ふゆの青そらはやせていて

もうかなしみを食べてくれない 銀いろしてとんでったロケットが投げかえされて燃えつきる


すみきりすぎた青そらに

見てはいけない眼があらわれてるまひるの星は恐ろしい

食べちらされた火の骸骨


さびしさの核融合する太陽が香っても夢は骨だらけでとても寒い

燃え落ちるロケットには祈れない


ゆうやけの雲もはだかで

血管がすけるのではいろっぽくないせめてくらやみを着せてほしい



唇からこぼれてしまうビスケットくずみたい惑星は幼い軌道を離れていく

優しすぎる季節はきみのためによくない


街角を何度もまがってみたけれど鉄腕アトムなんていない

とっても熱かったよ太陽のなかは夢みるために十万馬力だった


あっちへいけ鏡のなかの青い幽霊ゲームははじめたばかりだし

手を抜かないのが礼儀だから

(きどって嘘をつきはじめている)


どうせベンチで夕陽がはやい

そうやって空を見つめていたって

きみに帰っていけるところなんかない



電線に三羽の雀がとまってただあれもうたない

だあれもなかない

けれど一羽が落っこちた


それから春の風が吹く 天気もよろしい青い空をまた一羽が落ちる


なぜか秋の風

いちばんおしまいの一羽が枯葉のなかに落っこちた


ちっとも落ちない青い空だあれもなかない

だあれもわらわない

ただ電線が伸びているだけ



宇宙のなかのふれやまないハンモックのよう青空の裏を炎がうつる

過失速度で蜜に入っていく良質な夜 ぼくはその日忘れることをメモした


卵いろに渇れた切り株の根は見えないけものの皮膚が奥に黒ずんでいる

それで空が明るい

暗い脳に降りて割れた時の幼根


星と星の隙間には

去っていく記憶のない砂浜が続く耳穴に落ちた厚い手帳


ぼくは青空のように残酷な音楽を聴いている夜になると彗星が火を吹いた

すべての青い空を貫いて時が在る



新鮮な夜のなかでは泳ぎづらい むこう岸までの距離も知らなくて

いきなり泳ぎだすなんて無茶だっただれの夜なのかわかりはしない


夜のくらさに負けないように夢に見えてくる水にだって 星のかがやきはうつらない 等しい水圧だとつぶされない


つめたい水にとびこんだら とても心臓は耐えられない 夜をすこしづつ胸にかけよう


とびこんだからにはぼくの夜だ泳ぎつかれて溺死するとき

朝までの距離がきっとわかる



アルコールほんのすこしたりなかったゆうやけが燃えつきるまえ夜はきた ライトをつけろ

これから延長戦で生きる


ひとりになるの怖いなら

ひとと会ってはいけなかったすこし話しかけてみる

だれもいないことを確かめる


こんな川でも埋められないならいっそ大きく深くして

ぼくは向こう岸なんかないと思い込む


寒くなったら窓をとじて

目をあいたまま堪えていよう眠れば夢に追いつかれる



炎の船が高い林をかすめるとき幼い木の実は一瞬に熟れる

そしてたちまち火の雫になって堕ちる夜のすこしまえは残酷な時間だ


死んでしまうひとの脳に属するまっくらい野原で

たくさんの火がみどりの舌をだしている


鳥が卵のなかを飛んでいる

ぼくはこの世にとじこめられた銀河をすこしめくってくれ


青空にぶつかって死ぬ鳥たち

いつも七月の夢の午後二時を通過して羽毛は二十年かかって落ちてきた

けれど卵は割れてないのだ



公式時計は愛をくさらせる

心臓の赤い針はいつも苦しみを遅らせるぼくは時のかぞえ方を知らなかった

だからあの夜の虹に追いつけない


ぼくたちがおはようとまたあしたをなれた夢のように投げあうなら

すえた果物を食べながら

見つめ憎しみ方を覚えるだろう


わざとまちがえたがる心臓は血と青酸の結晶水だ

目のなかでしばらく天秤がじっとする


夜明けまえの妖精が夢をこばした氷のうえを駝鳥が走っている

はやく飛ばないと死んでしまう



誰か窓ごしに見ている

そとからあるいはなかからそれから考え込むとき

いつも棲家は目をとじてつくる


くつがえる恒星を見つめ

木がひかる指輪をはめるころ ふりかえるふいにめくらになる

こんなくらやみがいちばん優しい


北極星より寒い火が燃え急ぐ真空なそんなひろがり

ひまわりが咲きはびこり


火はくらやみのなかで澪れちるすこしは風が通ってくるのか ひとはここにいないのだが



惑星が初夏の軌道に入ると 木は生長しかわからなくなる木洩れ陽の領地のために

侵すことさえ許される


巨きな心臓を弾がつらぬいていく誰も声をたてない

かわりに空が焦げて転がる


地平に眠る草草に 空の血がしみてくる

たちまち荒っぽい群集だ


炎に髪をゆすいでいる木のしたをのろい柩が過ぎていく

組んだ指の蔭は涼しくて 見ている目は陰になれない



硝子細工に透明な蜜をみたしぼくは慎み深くみせびらかす

徹夜していちばん優しい嘘をこしらえる


外気の成分は明るい沼ばかり荒地には赤い絨緞をひろげる夢は潮のようにいらだって 悲しそうな角度でひいていく


いちめんの星と枯葉を洗って干せば 日暮には金貨ばかりが鳴いてるべきだすさまじい秋はよい


山ほどの水死者をあたためる

まだ燃えるものはみつからないか記憶に積もった灰ばかりなら

もう一回灰を燃やす



小型水たまりにひたって

こどもは三輪車でいったりきたりかわいた道に跡がつくから楽しい水の跡ならくっきりしている


なんにもしないでいたとき できないことなんてなかった日が照って日が照って

水はひとりで昇ってった


ほそほそのうすい雨が降ってきみはことばを習ってた

なんにもしないではいなかった


赤い波になってひいていく太陽が沈むわけじゃない きみが勝手に沈む



お祭りがあったので

だれがよそものかよくわかった遠いあの空のどこかで

いつまでも電話のベルが鳴りやまない


こころのヒューズがとびそうなつまたい風が吹いていて

きっと青い火が生まれてる ひとのいない沼からきたんだ


あかい模型のプロペラ機は 干潟のむこうへとんでいった

あけがたのひかりをきらきらまわして


純粋ということばを 久しぶりに思いだした

こんな病気ではもう死ねない



ゆりの花びらを削っていくようにきみの憎しみが青空の皮をはぐ 肺の血管がびりびりやぶけて

逃げおくれた小鳥たちが落ちてくる


天の果樹園で燃えつきた灰は

きみのこころならまだ熱くできる目からふきこぼれた思い出は

雪のスクリーンに映写する


慣性なら冬の領土は抜け出せまい地球はまわる推力は

きっといのちが燃料だ


眠るとき悔いあらためてやるものかふりかかる雪にやけどして

もう何もかも黙っていろ



そこの米屋で眠る猫

イチゴジャムさえ青ざめる寒い夕暮にはめをさます 火花が欲しくなるときだ


風にもまれる枝のじゃがいもとてもおいしいスープだから勇気をだしてとびおりろ


ところで雪がくるころだ

こたつのなかにまるくなって幸福なめくらのこころ


この猫はしじゅう漏電している気やすく手をふれるな

夜の野原にでかけることもある



お い と ま し ま す ー ー ー

good bye!

死 者 が 怪 訝 な 眼 を し て

the death has strange eyes,

立 ち 去 る 私 を 眺 め て い る

be seeing me who go away.

死 者 は そ の 生 の 最 高 潮 に 達 し た の だ が

the death has reached the acme now!

私 は 渦 潮 の 端 に 後 ず さ り

i have retreated from the edge of whirled acme.

消 え て い く の は 私 な の だ

not the death but i have gone out!

秩 序 の 掟 に イ ヤ イ ヤ し な が ら

reluctant to do order

生 き て い る 私 な ら ず も の

i am going my way , outlaw!

百 万 年 銀 河 を 迷 っ て 帰 還 し て も

millions years,wandering galaxy,return now.

身 を 横 た え る 石 のベ ッ ド も な い


grasses flow to eternal

水 も 血 も 流 れ る も の は す べ て 消 え て ゆ き

blood , water and so on too to-.

こ の う す ら あ か り の く う か ん に

here , in the twilight world.

た ま し い を こ ら え て 立 ち 止 ま る

i still stay with my solid soul


とんでいる鳥がはばたくのは はばたきながら落ちていくのは空が在ることを信じきれなくて空に触れようとするからだ


わかってしまっていけないことはわからないまま信じるべきか

流れている血を確かめたければ傷つくほかに方法はない


燃えている火を確かめたければとびこんで焼け死んでしまう 夜の蛾のようにするしかない


はばたくことが空を生むのだ空にぶつかって死んだ鳥は もう地上には落ちてこない



新聞記事によると

ニンゲンでいえば100歳を越える最後のトキは

突然飛び上がり 檻の天井に激突し脳挫傷で死亡


亡骸は檻のなかに落ちたが魂は檻の天井を抜けて

大空へ羽ばたいていった



夭逝のときはとうにすぎて罪をかさねて生きている 咽喉は喚きたがっている

脚はぶるぶる駆けたがっている


けものとして生きたかひととして生きたか 神のように生きたか 悪魔のように生きたか


すべて過剰は犯罪 ぶっ壊れたブレーキスタンピード


懺悔って何だ

人を傷つけずに生きて来れたか 許しを乞うような卑劣があるのに